「働き方改革」という言葉もかなり浸透してきているようですね。実際には数年前から使われていたようですが、公式には、「1億総活躍社会の実現」というメッセージとともに平成28年8月の第3次安倍内閣の発足時に基本方針と位置づけられたのが始まりと言われています。
中には、もう聞き飽きた、強引な残業削減などで却って働きにくくなったなど、ネガティブな印象を持っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
こうなると、その会社の方針や取り組み姿勢が真っ先に批判されたりするわけですが、そもそものところとして、この手のワードが広まる過程においては、さまざまな解釈が成立してしまい、当初の目的とのずれが大きくなってしまうという本質的な問題が隠されています。
哲学者バルトは、言葉の体系について、明示的意味(デノテーション)と潜在的意味(コノテーション)に区分けし、私たちの社会や行動はこの「コノテーション」によって支配され、制限されると看破しました。
例えば、「東大」という言葉のデノテーションは、”東京都文京区本郷に本部を置く国立大学”となりますが、コノテーションは、”頭がいい””勉強好き””エリート”となるなど。
「働き方改革」という言葉については、どうでしょうか?
IT業界では、「ITツールの活用」、教育・研修業界では、「意識改革・風土改革」、そして我々のような法律関連の専門家の間では「法令順守」・・・。もちろん、どれも間違っているわけではなく、というよりもどれも必要ではあるのですが、その抽象度の高さと資本主義社会の論理も相まって、各業界の都合の良いように解釈されやすく、その結果、どうしても手段の目的化が生じやすく、受け手が混乱する状況が見受けられます。かつて、「リストラクチャリング」という言葉が、元々は、「事業の再構築」という意味であったものが、いつからか「人員削減」「整理解雇」という意味で使われていたことがありましたが、ある意味それに通じる部分もあるかもしれません。
この辺りは私自身も当事者として自戒を込めて強く意識しなくてはいけないと考えるばかりです。
では、「働き方改革」のコノテーションとは何なのか?
改めて、この場で定義をしたいと思います。
「働き方改革」とは、社員が働きやすい職場環境を整備するとともに、適切なキャリア支援を行い、社員のスキルアップ・モチベーションアップを図ることで、労働生産性を高め、企業の業績アップを目指すための「人材活用戦略」である。
やや長い印象もあるかもしれませんが、これは、所属する(社)働き方改革支援コンサルタント協会において定義した内容です。
具体的には、以下10のテーマに落とし込み、支援サービスを展開しています。
- 多様な働き方の整備
- 非正規社員の待遇改善
- 女性の活躍推進
- 高齢者の就業支援
- 若者の雇用促進
- 育児と介護の両立支援
- 介護と仕事の両立支援
- 長時間労働の是正(労働時間の改善)
- ハラスメント対策
- 人材開発・キャリア支援
「働き方改革」が何を意味するのか?
改めて自社に当てはめて考えてみてはいかがでしょうか。
(2019-2-1)
~日本のビジネスに知と美しさと誠実さを~
「東京官学支援機構」
東京官学支援機構はアカデミズムに関わる中央官庁所管の行政法人、公益法人、国立大学法人等の諸活動を支援しています。西欧エスタブリッシュメント、ノブレスオブリージュ、メタNPOを志向する、経営者有志による事業団体です。
【活動内容】
・現代思潮に係るビジネスの支援活動
・教育産業市場の調査及び提言活動
・メタアカデミズム領域への寄付活動
※2021年5月より、三思会は、「東京官学支援機構」に改称・改組いたしました。
※当職は東京官学支援機構の賛助会員です。
~私たちは日本の哲学研究を支援しています~
「東京哲学会議」
※「東京哲学会議」は、東京官学支援機構(旧三思会)の諮問機関として、2020年12月より発足いたしました。
~日本のリベラルアーツを支える、伝える、考える~
※東京官学支援機構では、2021年12月より、日本のリベラルアーツを支える、その価値を伝える、そして私たち自身も考える、というポリシーの下、東京大学大学院及び東京藝術大学から情報提供を受けて、新たな学術研究支援のコミュニティ「東京リベラルアーツクラブ」を設立いたしました。
当方につきましても、2022年1月より、上記東京リベラルアーツクラブの主任研究員を拝命したこともあり、リベラルアーツ普及活動の一環として、ビジネス講座(コミュニティ)を立ち上げる運びとなりました。つきましては、説明会を兼ねたプレセミナーを開催いたしますので、ご興味のある方は、以下リンク先ページよりご確認いただきますようお願い申し上げます。
(2022-5-13更新)