出勤ゼロの月は、通勤手当も支給なしでOK?
文書作成日:平成26年11月1日
先月10月20日から通勤手当の非課税限度額が引き上げられましたね。(別の項目で取り上げていますので詳細はそちらでご確認ください。)一般の社員にとっては有難いですが、会社としては今年の4月から遡って適用となるため、処理が煩雑となり大変となりそうです。
今回は、通勤手当に関連して、少し取扱いに迷ってしまうような事例を取り上げてみようと思います。
「出勤日数が極端に少ない、もしくは全く出勤しない月の通勤手当を減額または不支給としてもよいか?」
一般的に、社員には通勤手当が支給されるケースがほとんどですが、休職や退職前の長期有給取得(その他会社によっては長期出張)などでほとんど出勤しない社員にまで通勤手当を支給するのは不条理な気がします。こういった場合、無条件で通勤手当分を減額または不支給としても問題なさそうですが・・・
結論から申し上げますと、出勤日数がゼロの場合でも、就業規則に減額・不支給の根拠規定がなければ、所定の金額を支払う必要があります。また、就業規則を変更した場合には、不利益変更の問題になるケースもあります。
ポイントとしては・・・
1)賃金の一部として支給している通勤手当についても、労基法上の賃金全額払いの原則が適用
される
2)通勤手当を支給する場合の要件については、基本的には会社の裁量に委ねられており、一定
の場合に、減額・不支給としても(労働契約法上の合理的な労働条件という意味での)”合理
性”という点で、原則問題ない
3)就業規則にこれまで定めがなく、新たに規定化した場合、「変更の必要性」と「変更の内
容」の両面から、”変更の合理性”を判断し、その就業規則の効力が認められる
以上になります。
3)はやや難しい話ですが、実態としては、通勤手当は労働の対価ではなく出勤のための費用援助という点を踏まえれば、基本給などと異なり、緩やかに変更が認められるのではと思われます。
また、年次有給休暇の場合も注意が必要です。
法律上、年休時の賃金は、①平均賃金 ②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③健康保険法の標準報酬日額の3つの方法がありますが、どのケースでも既に計算の基礎に通勤手当が含まれていることから、通勤手当を減額しても問題ないということになります(逆に支給してしまえば二重払いになりますね…)
ただ、実際の給与計算上は、普通に出勤したものとして処理している会社も多いようで、その場合には、通勤手当を減額すると問題ありとなってしまいます。この点、ご注意ください。
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