精神障害による労災請求件数
1,409件と過去最高
文書作成日:2014/8/6
長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかり、従業員が脳・心臓疾患や精神障害等を発症し、労災保険を請求するケースが増加しています。先月、厚生労働省より、この請求状況に関する平成25年度の調査結果が発表されました。以下ではこの結果について見ていくことにしましょう。
1.脳・心臓疾患の労災補償状況
脳・心臓疾患の請求件数は784 件となり、前年から58 件の減少となりました。また、支給決定件数についても306件と前年より32件減少しています。支給決定件数を業種別で多いものから見ていくと「運輸業、郵便業」、「卸売業、小売業」、「製造業」の順となっています。年齢別では50代、40代、60代の順で多く、いずれも50件を超えています。
2.精神障害等の労災補償状況
精神障害等の請求件数は1,409 件で、前年より 152 件の増加となり、過去最多を記録しました。一方、支給決定件数については436 件で前年より39
件減少、認定率は36.5%で、前年比2.5ポイントの低下となりました。支給決定件数を業種別で多いものから見ていくと、「製造業」、「卸売業、小売業」、「医療、福祉」の順になっています。また、年齢別としては30代と40代が中心となっています。
この精神障害等の労災認定は平成23年12月26日に基準の改定(「心理的負荷による精神障害の認定基準について」)が行われ、労災認定の判断で用いられる心理的負荷評価表の内容が具体化されました。その結果、請求件数が基準改定前よりも増加しています。
上記の支給決定件数436件を具体的な出来事別に分類すると上位項目は次のとおりとなっており、改めて過重労働やハラスメントに気を配る必要があることが分かります(最上位は同件数)。
①仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(55件)
②(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた(55件)
③悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(49件)
④(重度の)病気やケガをした(46件)
⑤1か月に80時間以上の時間外労働を行った(34件)
特に精神障害の場合には、職場内での人間関係が原因となることが多いため、企業としては過重労働の防止と併せて、就業規則の服務規律等でハラスメントを禁止する旨の内容を定め、従業員に周知・徹底したり、管理職を中心とした社内研修を実施したりなど、具体的な対策が求められています。場合によっては、最悪のケースも想定し、国の労災保険の上積みとするべく、民間の損害保険等に加入しておくことも必要でしょう。
■参考リンク
厚生労働省「平成25年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000049293.html
※文書作成日時点での法令・情報等に基づく内容となっております。